従業員 各位
日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
3月度の衛生委員会の資料になります。
3月度のテーマは「めまいについて」です。
皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。
ご安全に!!
2024年3月度
衛生委員会資料
産業医 坂井 伸好
めまいは乗り物に乗ったときや体調が悪い時など、健康な人でも日常生活のなかでよく経験する症状です。多くの場合は、横になって安静にすること、生活リズムを整えることで改善します。しかし、脳梗塞や心筋梗塞、不整脈など治療が必要な疾患の一症状となっている場合もありますので、注意が必要です。
めまいの種類・原因
めまいは、以下の二つに大きく分けられます。
回転性めまい:乗り物酔いのようなめまい、景色がぐるぐる回るようなめまい
浮遊性めまい:地に足がついていないようなふわふわと感じるめまい、船の上にいるよなふらつきのあるめまいその他に、立ちくらみや気が遠くなる、まっすぐ歩けない、ふらふらするという症状がめまいと表現されることもあります。発熱や睡眠不足など様々な原因でおこる全身の倦怠感がふらつきとして感じられることもあります。
症状は起き上がる、首を振るなどの頭を大きく動かす動きで悪化して、安静にすることで改善することが多いですが、安静で症状が改善しても、動くことで反復して症状が見られることも多々あります。
随伴症状としては吐き気が多いですが、原因によっては耳鳴や難聴、麻痺やしびれ、動悸、強い不安などの症状が出る場合もあります。
めまいを生じる代表的な病気
めまいの症状が生じる病気は、以下に列挙するように、多岐にわたります。
耳の病気:良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴、中耳炎など
脳神経の病気:脳梗塞や脳出血(特に小脳・脳幹の病変)、片頭痛、脳腫瘍、脊髄疾患など
心臓の病気:高血圧、不整脈、起立性低血圧など
こころの病気:過換気症候群、不安神経症
その他:貧血、低血糖、薬の副作用
めまいの主な受診科目
内科医
主に、耳鼻咽喉科や脳神経内科、内科で診療します。
まず、問診、神経診察を行います。疑われた病気によって以下の検査が追加されます。
耳の病気:聴力検査、平衡機能検査などが行われます。
脳神経の病気:神経学的検査、画像検査(頭部CT・MRI、脊椎MRI)など
心臓の病気:血液検査、心電図検査など
こころの病気:画像検査(頭部CT・MRI)、心理学的検査など
その他:血液検査など
受診のタイミング
多くのめまいでは頭や体を動かした時に増悪し、横になり安静にしていると改善しますが、安静にしていてもめまいが改善しない場合には脳神経の病気や心臓の病気などの緊急性の高い病気の可能性が高いため、病院への受診が必要です。
また、以下の随伴症状が見られた場合には、すぐに病院への受診が必要です。
突然の麻痺やしびれ、頭痛がある場合:脳梗塞や脳出血の可能性
失調(ふらつく、距離感がつかめない)がある場合:脳梗塞や脳出血の可能性
胸痛や脈の乱れがある場合:不整脈や心筋梗塞の可能性
下血などで大量に出血がある場合:高度な貧血となっている可能性
どういった薬を飲めば良いか・効く薬
市販薬
三半規管などに作用する内耳循環改善薬(ベタヒスチンメシル酸塩、ジフェニドール塩酸塩)が多く使われます。市販の乗り物酔いの薬(トラベルミン®︎など)も内耳循環改善薬の成分を含んでおり,回転性めまいとその他のめまいの一部に有効です。吐き気を伴う場合には制吐薬(メトクロプラミド、ドンペリドン)も併せて使います。不安や動悸などを伴う場合には抗不安薬(エチゾラムなど)で改善することもあります。
対処方法・すぐに治すためには
めまいが起こった場合には、まずは座るか横になって安静にして症状が軽快することを待ちましょう。それでも症状が軽快しない場合あるいは他の症状もある場合には、それぞれの対応が必要です。市販薬でも良いので、鎮痛薬や制吐薬など薬を用意しておくことで安心感が得られるでしょう。
吐き気がある場合
吐き気を伴う場合には、持参の制吐薬があれば、内服して様子を見ましょう。ただし、内服や水を飲むことが難しい場合やしばらく経ってもめまいが改善しない場合には、病院に相談して精査することをお勧めします。
頭痛がある場合
軽度の頭痛を伴う場合には、持参の鎮痛薬があれば、内服して様子を見ましょう。ただし、内服や水を飲むことが難しい場合やしばらく経ってもめまいが改善しない場合には、病院に相談して精査することをお勧めします。
一方で、激しい頭痛を伴う場合には、すぐに病院に受診を検討することをお勧めします。
寝起きの場合
寝起きの際に急激に頭を動かしたり、体を起こしたりするようなことで回転性めまいを生じることがあります。安静にしていると60秒以内に改善する場合は良性発作性頭位めまい症が疑われます。決まった順番に頭や体の向きを変えるめまい体操(Epley法、Semont法)が有効な場合があります。同様の体の動きで再度めまいが起こりやすくなるため、急にふりむくことや、頭の向きが急に変わる動作をさけるように努力しましょう。
生理前の場合
生理前や生理中はホルモン変化のために不安定な精神状態と自律神経の乱れが起きやすく、めまいも起きやすい状態になります。いつも生理のタイミングで同様のめまいを発症するのであれば、めまいが起こっても不安にならずにまずは様子を見ましょう。頭痛や吐き気などもあれば、その症状に合わせて薬の内服をしても良いでしょう。ただし、いつもと異なるめまいであれば、病院受診を検討しても良いでしょう。
耳鳴りの場合
耳鳴を伴う場合には、耳の病気である可能性があります。頭を動かした時に回転性めまいを繰り返して自覚し、安静にしていると60秒以内に改善する場合は良性発作性頭位めまい症が疑われます。決まった順番に頭や体の向きを変えるめまい体操(Epley法、Semont法)が有効な場合があります。また起き上がる、急にふりむくなど、頭の向きが急に変わる動作をさけることで症状が軽減します。
首こり/肩こりがある場合
首こりや肩こりがある場合には、それが原因で自律神経障害をおこし、めまいを発症する可能性があります。首こりや肩こりを解消しない限り、同様のめまい症状を繰り返す可能性があるので、肩体操やマッサージ、筋肉を温めるなどして首こりや肩こりの改善に務める必要があります。
動悸がある場合
動悸を伴う場合には、深呼吸をして呼吸を整えましょう。しばらく様子を見ても改善しない場合には、病院に相談して一度精査することをお勧めします。仮に、精査の結果大きな問題がないと判断されれば、同様のめまい症状が出現した時には、抗不安薬の内服で症状が軽快する可能性もあります。
どういった食べ物が有効か
めまい症状全体に効果的な食べ物はありません。しかし、ビタミンや微量元素の欠乏でふらつきなどを感じることもあるため、バランスの良い食事をとることが望ましいといえます。
一方で、めまいの一部には効果的な食べ物があります。例えば、貧血がめまいの原因になっている場合には、貧血改善対策として、魚介類や卵、大豆製品などの良質なタンパク質を含む食べ物やレバーなどの鉄分の多い食べ物を食事に取り入れることで、倦怠感やめまい症状の改善に有効である可能性があります。
まとめ
めまいはしばらく安静にすると改善することがほとんどです。めまいの原因は非常に多く、必ずしも明確にならないこともありますが、時に大きな病気が隠れていることもあります。症状が長く続く場合や同様のめまいに悩む場合には、早めに病院受診をして医師に相談することをお勧めします。