2023年1月度 衛生委員会からのお知らせ

従業員 各位

日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。

1月度の衛生委員会の資料になります。

1月度のテーマは「更年期障害について」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、

業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!!

2023年1月度 

衛生委員会資料

産業医 坂井 伸好

 

更年期障害とは

「閉経」とは、卵巣の活動性が次第に消失し、ついに月経が永久に停止した状態をいいます。月経が来ない状態が12か月以上続いた時に、1年前を振り返って閉経としています。日本人の平均閉経年齢は約50歳ですが、個人差が大きく、早い人では40歳台前半、遅い人では50歳台後半に閉経を迎えます。
閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間を「更年期」といいます。更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気に伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います。

更年期障害の主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら低下していくことですが(図1)、その上に加齢などの身体的因子、成育歴や性格などの心理的因子、職場や家庭における人間関係などの社会的因子が複合的に関与することで発症すると考えられています。

 

どんな症状がありますか?

更年期障害の症状は大きく3種類に分けられます。

 

血管の拡張と放熱に関係する症状

ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗など

 

その他のさまざまな身体症状

めまい、動悸、胸が締め付けられるような感じ、頭痛、肩こり、腰や背中の痛み、関節の痛み、冷え、しびれ、疲れやすさなど

 

精神症状

気分の落ち込み、意欲の低下、イライラ、情緒不安定、不眠など

更年期障害の特徴の一つは症状が多彩なことですが、これらが他の病気による症状ではないことを確認する必要があります。

 

どんな治療法がありますか?

更年期障害は身体的因子・心理的因子・社会的因子が複雑に関与して発症しますので、まず十分な問診を行うことが必要です。その上で生活習慣の改善や心理療法を試み、それでも改善しない症状に対して薬物療法を行います。
更年期障害の薬物療法は大きく3つに分けられます。

 

ホルモン補充療法(HRT

更年期障害の主な原因がエストロゲンのゆらぎと減少にあるため、少量のエストロゲンを補う治療法(ホルモン補充療法:HRT)が行われます。HRTは、ほてり・のぼせ・ホットフラッシュ・発汗など血管の拡張と放熱に関係する症状に特に有効ですが、その他の症状にも有効であることがわかっています。エストロゲン単独では子宮内膜増殖症のリスクが上昇するため、子宮のある方には黄体ホルモンを併用します(エストロゲン・黄体ホルモン併用療法)。手術で子宮を摘出した方には、黄体ホルモンを併用する必要はありません(エストロゲン単独療法)。HRTに用いるホルモン剤には飲み薬、貼り薬、塗り薬などいくつかのタイプがあり、またその投与法もさまざまです(図2)。よく話し合いながら、その人に合った最適な治療法を選択していきます。HRTに関しては、一時乳がんなどのまれな副作用が強調される傾向にありました。しかし最近になって、更年期にHRTを開始した人では心臓・血管の病気や骨粗鬆症など老年期に起こる疾患が予防できるという利点が、再び見直され始めています。

 

漢方薬

漢方薬はさまざまな生薬の組み合わせで作られており、全体的な心と体のバランスの乱れを回復させる働きを持ちます。多彩な症状を訴える更年期女性に対しては、「婦人科三大処方」とも呼ばれる当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸を中心に、さまざまな処方が用いられます。比較的体力が低下しており、冷え症で貧血傾向がある方に対しては当帰芍薬散を、比較的体質虚弱で疲労しやすく、不安・不眠などの精神症状を訴える方に対しては加味逍遥散を、体力中等度以上でのぼせ傾向にあり、下腹部に抵抗・圧痛を訴える方に対しては桂枝茯苓丸を、それぞれ処方します。

 

向精神薬

気分の落ち込み・意欲の低下・イライラ・情緒不安定・不眠などの精神症状が最もつらい症状である場合には、抗うつ薬・抗不安薬・催眠鎮静薬などの向精神薬も用いられます。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの新規抗うつ薬は副作用も少なく、またほてり・発汗など血管の拡張と放熱に関係する症状にも有効であることが知られています。

女性の平均寿命が90歳に近づきつつあるわが国において、更年期は人生の折り返し地点です。この時期に起きる様々な問題をかかりつけ産婦人科医と二人三脚で上手に乗り越えて、第2の人生を明るく幸せに過ごしましょう!

 

男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)とは

 

病気ではないのに、中高年男性で「なんとなく不調」「突然のほてりや発汗」などが続けば、男性更年期のトラブルかもしれません。女性特有と思われがちな更年期の症状は男性にもあり、性ホルモンの低下やバランスの乱れが原因とされています。

女性の更年期障害は、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少する閉経前後のおよそ10年間に起こり、閉経後は徐々に慣れて症状は治まっていきます。

男性の場合、男性ホルモン(テストステロン)は一般的に中年以降、加齢とともに穏やかに減少します。(図1)

減少の速さや度合い、時期は個人差が大きく、したがって女性と似た更年期症状が男性では、40歳代以降どの年代でも起こる可能性があります。ただし図2に示すように男性と女性の更年期症状には違いがあり、男性ホルモンの減少によるものを、加齢性腺機能低下症、またはLOH症候群と呼んでいます。


男性ホルモンの減少により、図3のような身体、精神、性機能の症状が現れます。表1の質問紙で簡単に更年期障害をチェックできます。

男性ホルモンは、いわゆる筋骨隆々の肉体や性機能だけに働くのではなく、認知機能や血管の健康にも関係しています。男性ホルモンの力を維持することが中高年男性の健康を守るカギとなるでしょう。男性ホルモンの減少は、ストレスや睡眠不足などの影響を受けるため、生活習慣の改善が症状回復につながります