2022年9月度 衛生委員会からのお知らせ

従業員 各位

日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。

9月度の衛生委員会の資料になります。

9月度のテーマは「てんかんについて」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、

業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!!

2022年9月度 

衛生委員会資料

産業医 坂井 伸好

 

てんかんとは

私たちの体をつくっている細胞にはすべて電気的流れがありますが、大脳の神経細胞(ニューロン)も、規則正しいリズムでお互いの調和を保ちながら電気的に活動しています。てんかん発作はこの穏やかなリズムを持った活動が突然壊れて、激しい電気的な乱れ(ニューロンの過剰な放電)が生じることによっておきます。このため、てんかん発作はよく『脳の電気的嵐』にたとえられます。この電気的嵐は、脳波検査によっててんかん性異常波としてとらえることができます。

てんかんのある人は、100人に一人の割合でいると言われていますので、日本全国にはおおよそ100万人が推定されています。さらに一生の間に1回あるいは数回だけしか発作をおこさないようなてんかん周辺群も含めますと、その数はおおよそ人口の5%にもなると言われています。

てんかんの原因

てんかんの原因は、さまざまあります。原因が分からないてんかんもありますが、次のとおり大きく2つに分けられます。

症候性てんかん

脳に何らかの障害や傷があることによっておこるてんかん
例)生まれたときの仮死状態や低酸素、脳炎、髄膜炎、脳出血、脳梗塞、脳外傷

特発性てんかん

さまざまな検査をしても異常が見つからない原因不明のてんかん

発症年齢

乳幼児期から高齢期まで、全ての年代で発病します、3歳以下の発病が最も多く、80%は18歳以前に発病すると言われています。
最近の傾向では、人口の高齢化に伴い、脳血管障害などが原因となる高齢者の発病が増えています。

てんかんと遺伝

てんかん全体としての、明確な遺伝形式はありません。親にてんかんがある場合、その子どもがてんかんを発症する頻度は4~%であり、一般の人の2~3倍ですが、てんかんの成因によって頻度が異なります。
近年の遺伝子研究の発展に伴い、遺伝子の変化がてんかんについても、重要な役割を果たすことが分かってきました。
てんかんのある人やその家族は、治療に際して専門医と遺伝子診断について、確認することが大切です。
検査(診断)により原因遺伝子が見つかった場合でも、治療方針に反映することができ、その有効性は高いと考えられています。

遺伝について、もう少し知りたい方は、次の参考文献をお読みください。

竹下絵里さんと東京医学社の許諾を得て、転載しています。)

「てんかんと遺伝カウンセリング」
(小児内科2021-10

てんかん発作の分類

てんかん発作は大きく分けると、全般発作部分発作(焦点発作)に分けられます。

部分発作(焦点発作)

脳のある部分から始まる発作です。脳のどの部分からおこるのかによって、発作のはじめの症状が決まります。さらに発作中の意識の状態とけいれんへの移行によって次のように分かれます

  1. 意識が発作中に保たれている単純部分発作
  2. 意識が障害される複雑部分発作
  3. 部分発作から二次的に全般発作に進展するもの

全般発作

発作のはじめから、左右の脳全体が「電気の嵐」に巻き込まれるもので、意識が最初からなくなるという特徴があります。

てんかんの分類

てんかんは、部分てんかん(局在関連てんかん)全般てんかんに大きく分けられます。さらに、発作を引き起こす原因によって特発性(明らかな脳の病変が認められない場合)と症候性(明らかな病変が認められる場合)に分けられます。ときには、部分てんかん(局在関連てんかん)か全般性てんかんか決められない分類不能てんかんもあります。

部分てんかん(局在関連てんかん)

脳のある部分から始まる、部分発作のあるもの。

特発性

特に脳の損傷があるわけではなく、年齢に関係して発症する良性なてんかん

症候性

病気の原因が脳の損傷(異常)に基づいているてんかん

潜因性

原因を明らかにできないてんかん

全般てんかん

特発性てんかん(原発全般てんかん)

全般てんかん発作を示すもので、神経学的検査で異常が見られず、脳の損傷も、画像診断などで認められないもの。原発性とは脳に損傷がなく、原因不明であることを意味し、一部に遺伝的要素も含みます。一般に経過は良好です。

症候性てんかん(続発全般てんかん)

てんかんの中で、もっとも難治な早期ミオクロニー脳症、サプレッションバーストを伴う早期乳児てんかん性脳症など、が代表的なものです。脳に広範囲な損傷が見られ、知能障害を伴います。続発性とは、慢性の脳の器質性障害から二次的におきていることを意味しています。

分類不能てんかん(焦点性か全般性か決定できないてんかん)

全般発作と部分発作をあわせ持つ場合、またはどちらの特徴にもあてはまらない場合があります。このような場合は、分類不能てんかんとしてまとめられます。代表的なものには、ドラベ症候群があります。

治りやすいてんかん、治りにくいてんかん

てんかんのある人のうち7080%は、薬や外科治療などにより発作を抑制(コントロール)できます。残りの2030%の人は、現在使用できるどの薬や治療法を用いても発作が止まらない難治性てんかんです。
てんかんは一生治らない「不治の病」と思われてきましたが多くいますが、てんかんは治療可能な病気です。特発性部分てんかんがもっとも治りがよく、100%の患者さんの発作が治療を開始してから2年以内に止まったのに対し、症候性全般てんかんでは、20%の人しか止まらないという研究結果があります。
このように、正しくてんかんを診断することが治療成果の見通しを立てるのに、大変重要です。

 

てんかんの分類と発作抑制率

(厚生省・難治てんかんの病態と治療に関する研究班による多施設共同研究、1991より)