2022年1月度 衛生委員会からのお知らせ

従業員 各位

日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。

1月度の衛生委員会の資料になります。

1月度のテーマは「胃がんについて」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、

業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!!

2022年1月度 

衛生委員会資料

産業医 坂井 伸好

胃とは

胃は食べ物を貯留(ちょりゅう:ためること)・消化・攪拌(かくはん:混ぜ合わせること)する機能があり、食道と十二指腸の間にあります。容量は個人差もありますが最大約1500mlです。食べ物は胃から適量ずつ十二指腸に送り出されます。実際の栄養分の吸収は、その後の小腸で行われます。胃の入り口を噴門(ふんもん:食道と胃の境界部)、出口を幽門(ゆうもん:胃と十二指腸の境界部)といいます。


1:胃の部位とはたらき

 

 

胃がんについて

症状

胃がんは60歳代に発生のピークがありますが、その前後でもかかる可能性があります。男性が女性よりもかかりやすい傾向があります(約2倍)。

発生する部位にもよりますが症状はない場合が大部分で、検診をきっかけに発見される場合も多いです。胃がんは潰瘍(かいよう:胃の一部が深いところまで傷ついた状態)を伴う場合も多く、その場合はみぞおちの痛みを感じることがあります。がんで胃の出口や内腔が狭くなると食事がとれなくなり、胸焼け、嘔気・嘔吐、体重減少、お腹が張る症状が出てきます。また、出血をきたすこともあり、その場合は貧血、黒色便などの症状が見られます。

診断

胃がんであるという診断は内視鏡検査(胃カメラ)で直接腫瘍を観察し、そこから組織を採取(さいしゅ)(生検(せいけん))して顕微鏡でがんであることを確認して行われます。胃がんと診断されると、どれくらい進行した状態であるかを示す病期診断をおこなうために、さらに詳しい検査が行われます。この病期診断をもとに治療方針が決定されます。

検査方法

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

胃の中を内視鏡で直接観察し、病理検査を行います。紹介元の病院で検査を行っている場合が多いですが、東病院消化管内視鏡科の専門医が腫瘍の拡がり、深さなどの観察や、他にも病変がないかを確認します。必要に応じて手術の際に胃を切除する範囲の指標となる印(クリップ)を胃の内部につけます。がんの深達度を詳しく調べるために超音波内視鏡検査(外部サイトにリンクします)が実施される場合もあります。


2:上部内視鏡検査で観察されるさまざまな胃がん

 

  • 病理検査とは:内視鏡検査で採取した組織に、がん細胞があるのか、あるとすればどのような種類のがん細胞か、などについて顕微鏡を使って調べること。詳しくは、関連リンクをご覧ください。

胸・腹部CT検査

X線を使って体の内部を輪切りのように描き出し、撮影する検査です。胃がんの深さ(壁深達度)・範囲や周りの臓器への浸潤(しんじゅん)の有無を調べます。また、肺・肝臓などの他臓器転移、リンパ節・腹膜転移がないかを確認します。CT検査ではヨード造影剤を用いますので、腎臓病や喘息、アレルギーのある患者さんは医師に申し出てください。CT検査は紹介元で撮影された画像をCD-ROM等の形で持参いただければ、当院での検査を省略できる場合があります。


3.CT検査で観察された

胃がんのリンパ節転移と、胃がんの肝転移

上部消化管造影検査(バリウム検査)

胃がんの集団検診でも行われる検査ですが、腫瘍の拡がり、深さなどを詳しく調べるために、胃がんと診断された場合に改めて当院で行う場合もあります(必要のない患者さんもいます)。

腹部超音波検査

他の検査と比べて、侵襲(しんしゅう)が低い検査です。胃がんの範囲、特に胃の周りの臓器への浸潤の有無や他臓器(肝臓など)への転移の有無、胃がん以外の病気の発見(胆のう結石など)をCT検査とあわせて行います。

下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)

大腸疾患を合併していないか調べる検査です。紹介元で行っている場合は院での検査は省略可能です。

PET検査 

放射性ブドウ糖液を注射し、糖代謝が活発ながん細胞に取り込まれる分布を撮影することで全身のがん細胞を検出する検査です。ほかの検査で転移・再発の診断が確定できない場合に行うことがあります。

その他

その他、全身麻酔下の手術を前提にした検査として血液(腫瘍マーカー)・尿検査、胸腹部レントゲン検査心電図・呼吸機能検査を行います。病状・進行度や併存疾患に応じてこれらの検査結果をみたうえでさらに追加検査が必要となる場合があります。

病期(ステージ)

病期とはがんの進行の程度を示す言葉で、胃がんはI期、II期、III期、IV期に分類されます。

胃がん治療は、臨床病期(予想進行度)によって、大きく分けて3通り(内視鏡、手術、抗がん剤)の方法があります。詳しくは治療方針をご覧ください。


4:胃がんの深さの分類

 

  • T1:胃がんが粘膜、粘膜下組織にとどまっている。
  • T2:胃がんが筋層(しょうまく)までにとどまっている。
  • T3:胃がんが漿膜(しょうまく)下組織までにとどまっている。
  • T4:胃がんがほかの内臓や組織に広がっている。
  • T4a:胃がんが胃の表面に露出している
  • T4b:胃がんが他の臓器に直接浸潤(しんじゅん)している


1:胃がんの臨床病期(ステージ)分類