従業員 各位
日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
6月度の衛生委員会の資料になります。
6月度のテーマは
「骨粗しょう症」です。
皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。
ご安全に!!
令和3年6月度
衛生委員会資料
産業医 坂井 伸好
概要
骨粗しょう症(骨粗鬆症)とは、骨の強度が低下してもろくなり、骨折しやすくなる病気です。骨の強度が低下する主な要因としては、女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏、加齢、運動不足などの生活習慣の3つが考えられます。骨粗しょう症全体の約90%を占め、一般的に広く認識されている「原発性骨粗しょう症」に関しては、加齢ならびにエストロゲン欠乏のために、とりわけ閉経後の女性が発症しやすいことが知られています。骨粗しょう症は骨折しやすくなるだけでなく、体全体の不調を招きかねない病気です。
原因
骨粗しょう症は、骨の強度が低下することで引き起こされます。骨の強度を規定する要因としては、骨密度と骨の質 (骨質) があります。骨の強度に関しては、70%が骨密度、残りの30%は骨質に影響されるといわれています。骨粗しょう症には、原発性と続発性の2つがあります。
原発性骨粗しょう症
原因となる明らかな疾患などがなく、主に女性ホルモンの低下や加齢によって引き起こされるものです。全体の約9割を占め、一般的に広く認識されている骨粗しょう症です。健康な骨の維持には骨の形成や吸収といった代謝のバランスが鍵となります。加齢に伴うビタミンDや副甲状腺ホルモンのはたらきの変化により骨代謝のバランスが崩れていきます。さらに女性の場合、閉経や加齢により、骨の分解を抑制するエストロゲンというホルモンの分泌が急速に低下します。その結果、骨の形成が吸収に追いつかなくなり、より骨を壊す方向へと傾いてしまいます。このほか、無理なダイエットや偏食により栄養バランスが偏ると、カルシウムやタンパク質、ビタミンD、ビタミンKなどが不足し、骨量が減りやすくなります。また、遺伝的要因が関わっていることも知られています。
続発性骨粗しょう症
特定の病気や薬の影響によって二次的に起こります。甲状腺機能亢進症やクッシング症候群などの内分泌疾患、胃切除や吸収不良症候群など栄養に関連した疾患、ステロイドなどの薬剤、糖尿病などの生活習慣病、先天性疾患などさまざまな原因が挙げられます。前述したように、骨の強度は骨密度と骨質によって規定されます。糖尿病の患者さんでは、同じ骨密度であっても骨折のリスクが高くなることが知られており、骨質の変化が発症に関わることがわかっています。女性に多い病気ではありますが、男性が発症した場合には生活習慣病が原因となっている場合が多く、症状が重篤になりやすいとされています。
症状
骨粗しょう症は、自覚症状がほとんどありません。一番問題となるのは、転倒やくしゃみなどのわずかな衝撃でも骨折しやすくなることです。体のなかでどの部分の骨が折れやすいかは、年齢によって変わってきます。50歳代頃から、前腕骨の手首部分である橈骨 (とうこつ) や脊椎の骨の主要部である椎体 (ついたい) を骨折しやすくなります。60歳代頃から椎体骨折が増え始め、70歳代になると前腕部の骨折よりも椎体骨折が上回るようになります。さらに72~73歳頃から大腿骨 (太ももの骨) 近位部の骨折が前腕部を上回るようになり、75歳以上で急激に増加します。この他、上腕骨 (肩からひじまでの骨) も好発部位のひとつです。脊椎の椎体が押しつぶされて骨折すると、背骨が変形して背中が丸く盛り上がった状態になります。このような背骨の変形が起こると、首や肩、腕、腰、呼吸器、消化器など体のあちこちに多様な症状が現れます。また、大腿骨近位部の骨折は寝たきりの原因として脳血管障害に次いで多く、その20%の方は骨折後1年で亡くなるともいわれています。残りの大半の方についても、寝たきりになる結果、認知症などを発症する場合が多いといわれています。その他の部位の骨折でも、活動性が低下し、運動不足になりがちです。運動不足によりますます骨が弱くなることがあるため注意が必要です。
検査・診断
国が実施している骨粗しょう症の検診では、生活習慣や食生活に関する問診と測定機器を用いた骨密度の測定が行われます。検査の結果によっては、より詳細な検査のために医療機関の受診がすすめられる場合があります。骨評価や骨密度測定の検査にはDXA (デキサ) 法が標準的に用いられています。DXA法は、エネルギーの低い2種類のX線を使って骨量を測定する方法です。骨粗しょう症の診断時には、背骨の腰に近い部分 (腰椎) と大腿骨近位部の2つの部位を測定することが推奨されています。
この他、定量的超音波測定法であるQUS法では超音波が骨の中を通過する超音波伝播速度と、減衰する程度を示す超音波減衰率を測定して骨評価を行います。この検査のみでは骨粗しょう症の診断をすることはできませんが、人間ドックや検診などでスクリーニング検査として広く用いられています。MD法が用いられることもあります。この他、X線 (レントゲン)やCT、MRIといった画像検査、血液検査や尿検査による骨代謝マーカーの測定、身長測定が実施されることがあります。
治療
骨粗しょう症では薬剤治療が中心となりますが、食事や運動といった生活習慣の改善も重要です。骨粗しょう症の治療に用いられる薬剤は、骨吸収を少なくする薬 (骨吸収抑制薬)、骨形成を助ける薬 (骨形成促進薬)、カルシウムの吸収量を増やす薬 (骨・カルシウム代謝調整薬) の3種類に大別されます。高齢の方の場合、古い骨が新しく置き換わるのに時間がかかるため、ある程度長期間の服薬が骨密度を向上させるために重要です。将来の骨折予防のためにも、自己判断で服薬を中止することなく、医師の指示に従うようにしましょう。また、骨粗しょう症の治療には、バランスのよい食事と適度な運動が効果的です。生活習慣の改善は、骨粗しょう症を予防する観点からも大切です。