従業員 各位
日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
2月度の衛生委員会の資料になります。
2月度のテーマは
「脂質異常症(高脂血症)の基礎知識について」です。
皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。
ご安全に!!
令和3年2月度
衛生委員会資料
産業医 坂井 伸好
脂質異常症(高脂血症)の基礎知識
脂質異常症(高脂血症)とは
脂質異常症は今まで高脂血症と呼ばれていた病気で、
血液中のコレステロール値が異常になる病気です。
病気の要因には体質や生活習慣など多くのことが考えられます。
脂質異常症によって症状が出ることはあまりありませんが、
動脈硬化を引き起こすことで狭心症や脳梗塞になることがあります。
また、コレステロールが胆汁に多く含まれるようになり胆石が起こることもあります。
脂質異常症は血液検査を行って診断します。
食事療法・運動療法・薬物療法を用いて治療します。
脂質異常症が心配な人や治療したい人は、代謝内分泌内科や総合内科などを受診して下さい。
脂質異常症(高脂血症)について
- 以下のいずれかの状態になる病気
- 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が多い
- LDLコレステロール値≧140mg/dL
- 善玉コレステロール(HDLコレステロール)が少ない
- 善玉コレステロール値<40mg/dL
- トリグリセリド(中性脂肪)が多い
- 中性脂肪≧150mg/dL
- 総コレステロールやLDLコレステロール、中性脂肪が低いものについては脂質異常症には含まれない
- これらに関しては原則的に治療は必要ない
- 大きく分けて2つのタイプがある
- 原発性脂質異常症(遺伝によって起こるタイプで、家族性高コレステロール血症が代表的)
- 二次性脂質異常症(他の病気や薬が原因で起こるタイプ)
- 二次性脂質異常症の原因
- 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が多い
脂質異常症(高脂血症)の症状
- 脂質異常症そのものが症状を起こすことはまれだが、
- 脂質異常症が動脈硬化を早めたりすることで色々な病気を起こしやすくする
- 動脈硬化が原因となる病気
- 脂質異常症そのものが原因で起こる症状
- 黄色腫(腱黄色腫、眼瞼黄色腫)(コレステロールを多く含む組織が黄色いかたまりを作った状態)
- 胆石(胆のうの中でコレステロールが固まって石のようになった状態) など
脂質異常症(高脂血症)の検査・診断
- 問診
- 家族に脂質異常症の人がいるかどうかの確認
- 飲食や運動、喫煙などの生活習慣の確認
- 持病の確認
- 血液検査
- コレステロールや中性脂肪の血中濃度を調べる
- 二次性高脂血症の可能性が疑われる場合は、
- 血液検査でホルモンバランスを見て、他の病気がないかを確認することもある
脂質異常症(高脂血症)の治療法
- 治療の第一目的とされることが多いのは、LDLコレステロールを下げることである
- HDLコレステロールやトリグリセリドに関しては、
LDLコレステロールの値を正常にすると、一緒に正常になることもある
-
- LDLコレステロールの値を低下させることによって、
さまざまな病気の発生率が低下することが示されている
- LDLコレステロールの目標値
- 過去に虚血性心疾患をしたことがある患者は100mg/dL以下
- 過去に糖尿病、慢性心臓病(CKD)、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)を罹患したことがある患者は120mg/dL以下
- 上のいずれにも該当しない患者は以下を鑑みて目標を決める
- 年齢
- 性別
- 喫煙
- 高血圧症
- 低HDLコレステロール血症
- 耐糖能異常
- 早発性冠動脈疾患の家族歴
- 治療の最初のステップは、生活習慣の改善である
- 食事療法
- 卵、レバー、魚卵(いくら、すじこなど)などはコレステロールを多量に含んでいるため注意
- 野菜の多めに摂取する
- 運動療法
- ウォーキングなどの有酸素運動が推奨される
- 生活習慣の改善でLDLコレステロールが十分下がらない場合や、何らかの事情で生活習慣の改善が困難である場合には内服薬を使用する
- スタチンというタイプの薬を内服することが最も多い
- その他に次のタイプの治療薬を内服することがある
- フィブラート系
- 陰イオン交換樹脂
- 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
- EPA製剤(魚から取れる油の一種)
- ニコチン酸誘導体
- モノクローナル抗体 など
- 食事療法
脂質異常症(高脂血症)に関連する治療薬
陰イオン交換樹脂
- 消化管内で胆汁酸を吸着しそのまま体外へ排泄させてコレステロールを下げる薬
- 肝臓で作られたコレステロールの一部は胆汁酸へ変換され消化管へ排泄される
- 消化管へ排泄された胆汁酸の多くは腸で吸収され再びコレステロールとして利用される
- 本剤は陰イオン交換樹脂という物質でできた薬剤であり、胆汁酸を吸着する作用をあらわす
パントテン酸製剤
- 体内にパントテン酸を補充し、エネルギー代謝などに関与して、脂質異常症、湿疹、便秘などを改善する薬
- パントテン酸は水溶性(水に溶けやすい性質)ビタミンでエネルギー代謝などに関わっている
- エネルギー代謝に関わることで、コレステロール低下や血小板数改善するなどの作用をもつ
- 副腎皮質ホルモンの合成にも関与し、ストレスに対する防御機能を高めるとされる
- アミノグリコシド系抗菌薬による副作用の予防や治療に使用する場合もある
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
- 小腸におけるコレステロールの吸収を抑え、血液中のコレステロールを低下させる薬
- 脂質異常症ではコレステロールなどの数値異常がおきている
- 小腸では食事及び胆汁由来のコレステロールが小腸コレステロールトランスポーターという物質の働きによって吸収される
- 本剤は小腸コレステロールトランスポーターを阻害し、小腸におけるコレステロール吸収を阻害する
脂質異常症(高脂血症)の経過と病院探しのポイント
脂質異常症(高脂血症)が心配な方
脂質異常症は一般的な病気で、特に症状は出ませんが健康診断などで
コレステロール値や中性脂肪値が高いと指摘されたことのある方は多いのではないかと思います。
そのような場合、一般内科のクリニックや病院での受診をお勧めします。
脂質異常症はとても一般的な病気であるため、専門医でなくとも一般的な治療は十分に行うことができます。
脂質異常症の診断は血液検査で行います。脂質異常症の程度が強い場合には、
それが分かった段階で心臓の異常がないか、動脈硬化が進んでいないかなどを、
心電図や脈波測定検査、頚動脈エコーで確認します。
こちらもクリニックで行えることがありますが、特に脈波測定検査や頸動脈エコー検査は、
病院か、もしくは一部のクリニックでしか行われていません。
必須の検査ではありませんし、必要と判断されれば紹介の上で病院を受診することになります。
脂質異常症(高脂血症)でお困りの方
脂質異常症の治療の中心は血液中のコレステロールや
中性脂肪の濃度が上がらないようにすること(運動療法、食事療法、薬物療法)です。
特殊な設備を要するものではなく、内科のクリニックで十分に行うことができます。
長期的な通院が必要となりますので、何よりも主治医との相性や病院の通いやすさが重要です。
信頼できて食事や運動など日常生活の悩みをしっかり相談できる
主治医を見つけることはとても大切で、
細かな薬の使い分けなどよりも影響が大きい部分かもしれません。
さまざまな他の病気を発症しやすくなります。
このような異常が生じた場合に早期発見することも大切です。
主治医を作り定期的な検査を受けることと、
それと同時に自身でも脂質異常症についての理解を深め、
食事の工夫を含めたセルフケアを行っていくことが、
他の病気にも増して重要になります。