2020年9月度 衛生委員会からのお知らせ

従業員 各位

 

日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
9月度の衛生委員会の資料になります。

9月度のテーマは「大腸がんについて」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!!

 

令和2年9月度 

衛生委員会資料 

産業医 坂井 伸好

 

1.大腸(結腸・直腸)について

大腸は、食べ物の最後の通り道です。小腸に続いて、右下腹部から始まり、おなかの中をぐるりと大きく時計回りに回って、肛門につながります。長さは1.52mほどの臓器で、「結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)」と「直腸(直腸S状部、上部直腸、下部直腸)」に分けられます(図1)。

大腸は、水分を吸収します(大腸には栄養素の消化吸収作用はほとんどありません)。大腸に入った食物残渣(小腸で消化吸収された食物の残り)は、水分を吸い取られ、肛門に至るまでにだんだんと固形の便になっていきます。大腸での水分の吸収が不十分だと、軟便になったり、下痢をおこしたりします。

図1 大腸の構造

 

2.大腸がん(結腸がん・直腸がん)とは

大腸がんは、大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんで、

腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、

正常な粘膜から直接発生するものがあります。

日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。

大腸の粘膜に発生した大腸がんは次第に大腸の壁に深く侵入し、

やがて大腸の壁の外まで広がり腹腔(ふくくう)内に散らばったり、

あるいは、大腸の壁の中のリンパ液や血液の流れに乗って、

リンパ節や肝臓、肺など別の臓器に転移したりします。

 

3.症状

早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が出ることが多くなります。

症状としては、血便(便に血が混じる)、

下血(腸からの出血により赤または赤黒い便が出る、便の表面に血液が付着する)、

下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、

おなかが張る、腹痛、貧血、体重減少などがあります。

最も頻度が高い血便、下血は痔(じ)などの良性の病気でもみられるため、

そのままにしておくとがんが進行してから見つかることがあります。

大腸がんの早期発見のために早めに消化器科、胃腸科、肛門科などを受診することが大切です。

がんが進行すると、慢性的な出血による貧血や、腸が狭くなる(狭窄する)ことによる

便秘や下痢、おなかが張るなどの症状が出ることがあります。

さらに進行すると腸閉塞(ちょうへいそく)(イレウス)となり、便は出なくなり、

腹痛、嘔吐(おうと)などの症状が出ます。

大腸がんの転移が、肺や肝臓の腫瘤(しゅりゅう)として先に発見されることもあります。

 

4.組織型分類(がんの組織の状態による分類)

大腸がんは、腺がん、扁平(へんぺい)上皮がん、腺扁平上皮がんに分かれます。

大腸がんの多くは腺がんです。

腺がんは乳頭腺がん、管状腺がん、低分化腺がん、粘液がん、印環細胞がん、髄様がんに分かれます。

 

5.関連する疾患

大腸の病気には、遺伝性の病気である家族性大腸腺腫症やリンチ症候群、

炎症性の病気である潰瘍性大腸炎やクローン病などがあります。

これらの病気がある人は、大腸がんが発生しやすい傾向にあります。

 

6.患者数(がん統計)

大腸がんは、日本全国で1年間に約158,000人が診断されます。

やや男性に多い傾向にあり、30代前半から増加して、高齢になるほど多くなります。

男性では胃がん、前立腺がんに次いで3番目、女性では乳がんに次いで2番目に多いがんです1

 

7.発生要因

大腸がんの発生は、生活習慣と関わりがあるとされています。

赤肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)の摂取、

飲酒、喫煙により大腸がんの発生する危険性が高まります。体脂肪の過多、腹部の肥満、

高身長といった身体的特徴をもつ人で、大腸がんを発生する危険性が高いといわれています。

また、家族の病歴との関わりもあるとされています。

特に家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の家系では、近親者に大腸がんの発生が多くみられます。

 

8.予防と検診

1)予防

日本人を対象とした研究結果では、がん予防には禁煙、節度のある飲酒、

バランスのよい食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれています。

大腸がんを予防するには、食物繊維を含む食品の摂取が効果的であることがわかっています。

結腸がんの予防には、運動も効果的です。

 

2)検診

がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、

がんによる死亡を減少させることです。わが国では、厚生労働省の

「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が定められています。

男女ともに、40歳以上は年に1回、大腸がん検診を受けましょう。

ほとんどの市町村では、検診費用の多くを公費で負担しており、一部の自己負担で受けることができます。

検診の内容は、問診と便潜血検査です。問診では、自覚症状や既往歴、家族の病歴などを確認します。

問診は、検診の対象として適切か、診療の対象ではないかの判断に用いる参考情報です。

便潜血検査では、大腸がんやポリープなどによる出血が便に混じっていないかを調べます。

通常、便潜血は微量で目には見えません。がんからの出血は間欠的であるため、2日分の便を採取します。

便潜血検査による検診は、がん死亡率を減らす科学的根拠があり、安全、簡単、安価な検査です。

検査の結果が「要精検」となった場合は、必ず精密検査を受けましょう。

精密検査では通常大腸内視鏡検査を行います。

大腸内視鏡検査が困難な場合は他の検査を行うこともあります。

がんは1回の検診で見つからないこともありますので、毎年定期的に受診してください。

また、検診と検診の間に発生して、急速に進行するがんもわずかながらあります。

血便、腹痛、便の性状や回数の変化など、

気になる症状が続く場合は、次の検診を待たずに医療機関を受診してください。

なお、検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。

がんの診断や治療が終わった後の診療としての検査は、ここでいう検診とは異なります。