2019年12月度 衛生委員会からのお知らせ

衛生委員会資料従業員 各位


日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。

12月度の衛生委員会の資料になります。


12月度のテーマは「心筋梗塞について」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!! 

                  

令和元年12月度 

衛生委員会資料  

産業医 坂井 伸好

 

 

心筋梗塞【しんきんこうそく】とは

心筋梗塞【しんきんこうそく】は、心臓を動かす心筋に血液が届かなくなって、激しい胸の痛みなどに襲われる病気です。

類似した病気の狭心症【きょうしんしょう】と合わせ、虚血性心臓疾患と呼ばれます。「虚血性」とは「血液が足りない」という意味です。

虚血性心臓疾患は、欧米に比べると患者数が少ないのですが、高齢者人口が増えるにつれ患者数が

増えており、いまや、がん・脳卒中と並ぶ日本人の三代死因の一つになりました。

急性心筋梗塞に限ると、年間約15万人が発症し、そのうちの約30%が亡くなっていると言われています。発症したら一刻を争う事態となるので、迷わず救急車を呼びましょう。

ここでは、心筋梗塞がなぜ起こるのか、どういう症状が現われるのか、どういう治療・手術をするのか等を説明します。

 

心筋梗塞とはどんな病気?

(図1)

心筋梗塞とは、心臓に酸素と栄養分を運ぶ冠動脈【かんどうみゃく】(冠状動脈とも言います)が

詰まって血液が流れなくなり、心筋(心臓を動かしている筋肉)が死んでしまう病気です。筋肉が死ぬことを「壊死【えし】」と言います。

冠動脈は、心臓を出てすぐのところにある大動脈から枝分かれし、心臓に木の枝の冠をすっぽりかぶせたような形で走っています(図1)。冠動脈には、右冠状動脈、左前下行枝【ひだりぜんかこうし】、左回旋枝【ひだりかいせんし】の3本があります(左前下行枝と左回旋枝は、合わせて左冠状動脈と言います)。

心筋が動くには、この3本の冠動脈を通して酸素と栄養分を得なければならず、冠動脈が詰まってしまったら、詰まった先にある心筋は、酸素と栄養分が届かず壊死してしまいます。壊死した心筋は再生しません。心筋が壊死すると、心臓から充分な血液が全身に送り出せなくなり、迅速に治療しないと死に至る恐れがあります。

3本の冠動脈のうち、1本が詰まったものを1枝病変、2本詰まったものを2枝病変、3本すべてが詰まったものを3枝病変と呼びます。一般に、詰まった箇所が多ければ多いほど重篤です。

心筋梗塞のほとんどは、突然襲ってくる急性心筋梗塞です。知らず知らずのうちに血管が詰まる心筋梗塞もありますが、ここでは、大部分を占める急性心筋梗塞を中心に話を進めます。

 

狭心症との違い

心筋梗塞と類似した病気に、同じ虚血性心臓疾患の狭心症があります。両者の違いは、冠動脈の詰まり方にあります。

心筋梗塞が、冠動脈が塞がり血流がなくなってしまった状態であるのに対し、狭心症は、冠動脈の内径が狭くなった状態で、まだいくらかは血流があります。したがって、心筋梗塞のほうがより危険で重篤と言えます。

どちらも、胸の痛みや圧迫感といった症状が出ますが、狭心症では、そうした症状が数分から長くて15分程度と一時的なのに対し、心筋梗塞では30分以上継続し、安静にしていたり、救急薬のニトログリセリンを服用したりしても、治まりません。

 

心筋梗塞の原因

心筋梗塞の原因の大部分は、動脈硬化です。
高血圧や脂質の過剰摂取などのさまざまな要因で血管が柔軟性を失い、硬くなってしまう現象を動脈硬化と言います。動脈硬化が進むと、血管壁が厚みを増し、血管の内径が狭くなります。こうして血流が悪くなった状態が、狭心症です。

心筋梗塞の大部分は、その動脈硬化の進んだ血管壁の内側に、脂質(脂肪分)から成るコブのようなものができることで発症します。

まず、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が血液中に増えすぎると、傷のついた内皮細胞(動脈の血管壁を形作っている一番内側の細胞)のすき間からLDLコレステロールが血管壁の内側に入り込みます。

続いて、それを退治しようとする免疫細胞や、その他の細胞も入り込むため、血管壁がコブのように膨れ上がります(図2)。この「アテローム(粥腫【じゅくしゅ】)」と呼ばれる脂質のコブ(プラーク)が大きくなって破裂すると、そこに急速に血の塊(血栓)ができ、血管が塞がれてしまいます。これが心筋梗塞です。

(図2)

 

心筋梗塞の前兆とチェック項目

心筋梗塞の前兆は、胸の痛みや、胸が締めつけられるような圧迫感です。心筋梗塞を起こした人の約半数は、発症する1~2か月以内に、そうした前兆を経験します。

しかし、残りの約半数は、そんな前兆なしに、いきなり発症します。また、糖尿病や高血圧症を抱えている人、高齢者などは、痛み等の自覚症状がないことがしばしばあります。したがって、前兆がないからと油断するのは禁物です。

前兆がある場合によく見られるパターンは、胸の痛みや圧迫感が、まず5~10分程度数回繰り返され、その後大きく激しくなったり、頻度を増したりします(こういう状態を「不安定狭心症」と言います)。

不安定狭心症でも、安静にしていればほぼ治まるので、軽く考えて放置してしまう人が少なくありません。胸の違和感や痛み、締めつけられるような感じを繰り返すようなら、心筋梗塞を疑ったほうがいいでしょう。

また、夜間や安静時にも痛みなどが出るようなら、必ず医療機関を受診しましょう。

 

チェック項目

胸の痛みや圧迫感はなくても、以下のような症状を繰り返すようなら、注意が必要です。

・不整脈が出る

・急に激しい動悸が起こる

・脈が異常に速くなる

・脈がドキンと飛ぶ感じがする

 

心筋梗塞の予防方法

心筋梗塞を予防するには、動脈硬化を起こさないことです。動脈硬化のほとんどは生活習慣に起因するので、まずはその改善を図りましょう。
以下のような点に注意が必要です。

食事

バランスの良い食事が大切です。塩分・糖分・脂肪分を取りすぎないようにしましょう。飽和脂肪酸の多い肉やバターなどよりも、不飽和脂肪酸の多い魚やえごま油などを取るよう心掛けましょう。

運動

日頃、体を動かすようにしましょう。運動をする場合は、ウォーキングなど呼吸をしながら行なう有酸素運動がお勧めです。息が切れない、軽く汗をかく程度の運動で充分に動脈硬化は防げます。短距離走や重量挙げのような瞬発力を必要とする無酸素運動は、必要ありません。毎日30分以上の歩行を目標にしましょう。また、早朝や深夜は、冠動脈が収縮していることが多いので、避けたほうがいいでしょう。起床後すぐよりも、1時間後くらいが適当です。

ストレス

ストレスは発症の引き金になります。完全主義者で仕事をきちんとやり遂げようとする人ほど、動脈硬化を起こしやすいといわれています。うまくストレスをかわす工夫をしましょう。

禁煙

タバコは百害あって一利なしです。血管を傷つけたり収縮させたりするだけでなく、副流煙は周りにいる人たちにまで健康被害をもたらします。タバコはやめましょう。昇したときに脳動脈の内圧が上がって壁が破れ、くも膜下出血を引き起こします。

脳動脈瘤は、動脈硬化や血管の先天性疾患(生まれつきの病気)などを原因として発生します。