2019年10月度 衛生委員会からのお知らせ

衛生委員会資料従業員 各位


日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。

10月度の衛生委員会の資料になります。


10月度のテーマは「胃食道逆流症、逆流性食道炎について」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!! 

                  

令和元年10月度 

衛生委員会資料  

産業医 坂井 伸好

胃食道逆流症(GERD)、逆流性食道炎

 胃食道逆流症(GERD)、逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症(NERD

胃酸を多く含む胃の内容物が食道内に逆流して起こる病態を、胃食道逆流症(Gastro Esophageal Reflux Disease GERD)といいます。胃食道逆流症(GERD)は、症状や食道の粘膜の状態によって、逆流性食道炎と非びらん性胃食道逆流症(Non-Erosive Reflux Disease NERD)とに分けられます。胸やけ、呑酸(どんさん) などの症状があり内視鏡検査で、食道粘膜にびらん 潰瘍 などの異常な病変が見られるものが逆流性食道炎です。また、胸やけ、呑酸などの症状があるにもかかわらず、内視鏡検査で食道粘膜にびらんや潰瘍などの病変が見られないものが非びらん性胃食道逆流症(NERD)です(表)。(表)胃食道逆流症(GERD)、逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症(NERD)とは

 

 

胸やけ症状

食道の粘膜の目に見える炎症(びらんや潰瘍など)

胃食道逆流症(GERD

逆流性食道炎

ある※
※症状がないこともあります(無症候性逆流性食道炎)

ある

非びらん性胃食道逆流症(NERD

ある

ない

<症状>

主な自覚症状は、胸やけと呑酸(どんさん) です。特に、空腹時や夜間の胸やけが特徴的です。胸やけがひどいせいで、夜中に目が覚めてしまったり、心臓の病気と同じような胸の痛みを感じたりすることもあります。
また、その他に、のどの違和感、よく咳き込む、声がかれるなど、食道以外の症状が出ることもあります。
ただし、食道の粘膜に目に見える炎症が起きていても、症状がない場合もあり、その場合、無症候性逆流性食道炎(むしょうこうせいぎゃくりゅうせいしょくどうえん)といわれます。

<原因>

胃酸が食道に逆流し、粘膜を刺激することが原因です。食道の粘膜は、胃の粘膜とは違い、胃酸の刺激から身を守る仕組みを持っていないので、胃酸に触れると炎症を起こしてしまいます。とくに、胃や食道の運動機能が低下している場合には、食道が胃酸にさらされる時間が長くなり、炎症が起きやすいと考えられています。
食道の粘膜が胃酸に触れてしまう原因として、食道と胃の境目である噴門部(ふんもんぶ)の筋肉の力が弱まることによる胃酸を含む胃の内容物の食道への逆流、食道裂孔ヘルニア(しょくどうれっこうへるにあ)、腹圧の上昇などが挙げられます。

噴門部の筋肉は、下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)といって、胃酸が胃から出ないように調整する役割を持っています(図)。下部食道括約筋の力が弱くなるのは、暴飲暴食、脂肪分の多い食事、不規則な食事時間が生じていることなどが原因と考えられています。妊娠中、肥満、便秘などの方は、胃をはじめとした内臓に常に圧力がかかっている状態(腹圧が上がっている状態)ですので、胃酸が食道まで逆流し、胃食道逆流症(GERD)になりやすいといわれています。


食道のしくみ

<検査>

胃食道逆流症(GERD)が疑われる症状の場合の検査は、逆流性食道炎・非びらん性胃食道逆流症(NERD)とも同じです。
内視鏡検査で、逆流性食道炎なのか、非びらん性胃食道逆流症(NERD)なのかを判断します。
ただし、問診で胃食道逆流症(GERD)であると医師が診断した場合(胸やけと呑酸がある場合)、内視鏡検査やその他の検査は行わずに、胃酸の分泌を抑える薬を使用した治療を先に行い、様子をみることもあります。

内視鏡検査:
食道粘膜の炎症の有無とただれ具合(食道粘膜の状態やびらん・潰瘍の有無)を観察します。内視鏡検査で、逆流性食道炎なのか、非びらん性胃食道逆流症(NERD)なのかをはっきりさせることができます。
食道裂孔ヘルニアが胃食道逆流症(GERD)の原因になっていることもあるため、この時の内視鏡検査で食道裂孔ヘルニアの有無も確認します。

胃酸分布測定(24時間pH(酸性度)モニタリング検査):
細い管を鼻から胃に通して、24時間、胃の中と食道の中のpH測定を行います。
この検査は、外来で行う場合と、1泊入院をして行う場合があります。外来で行う場合は、機械をつけるときと外すときにだけ病院に行き、その他の時間は普段と同じように過ごすことができます。食事などにも制限はありませんが、体に機械を付けているため、入浴はできません。
この検査では、食道粘膜がどの程度胃酸にさらされているかを知ることができます。

PPIテスト(Proton Pump Inhibitor テスト):
プロトンポンプ阻害薬(PPI Proton Pump Inhibitor)という胃酸の分泌を抑える薬を飲んで、症状が改善するかを確認する検査です。薬を2週間程度飲み続けながら、様子をみます。

<治療>

胃食道逆流症(GERD)の治療は、逆流性食道炎・非びらん性胃食道逆流症(NERD)のどれであっても、同じで、胃酸分泌を抑える薬を使用します。
薬物療法が基本ですが、同時に生活習慣の改善も行います。また、胃食道逆流症(GERD)の原因にあてはまるものがあれば、原因を取り除く治療や工夫も行います。

薬物療法:
胃酸の分泌を抑える薬を服用します。
自覚症状がなくなっても、食道粘膜の炎症が治る前に、薬の服用をやめてしまうと、再発する可能性もあるため、薬は医師と相談しながら、継続して服用することが大切です。

生活習慣の改善:
胃酸の出過ぎを抑え、肥満を解消するための食事として低脂肪食が推奨されています。 また、胃酸の分泌を促進する油っぽいもの、甘いもの、刺激性の強いもの、アルコールは極力避け、禁煙を心がけましょう。
その他にも、食後すぐに横にならない、ベルトやコルセットを締め付けすぎない、前かがみにならない、寝るときは上半身を少し高くして食道に胃酸が逆流しにくいようにするなどの生活習慣の改善により、症状が和らぐこともあります。
妊娠中は胃が圧迫されるので、お腹を圧迫するような姿勢をとらないことなどに注意が必要です。

また、腹圧を下げるために、適度な運動と食事内容の工夫で肥満や便秘の解消ができるよう生活を見直してみましょう。