2019年1月度 衛生委員会からのお知らせ

衛生委員会資料従業員 各位


日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
1月度の衛生委員会の資料になります。

1月度のテーマは「SASについて」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!! 

平成31年1月度

衛生委員会資料 

睡眠時無呼吸症候群と循環器病─ そのいびきが危ない!

ここだけでも読んでください! ~時間のない方のために~

睡眠時無呼吸症候群は、文字通り寝ている間に何回も呼吸が止まる病気です。英語では Sleep Apnea Syndrome といって、頭文字をとって SAS(サスと読みます)と呼ばれています。睡眠中、平均して1時間に5回以上、それぞれ10秒以上呼吸が止まる場合は、この症候群の可能性があります。

国立循環器病研究センターでは年間約500人の方がこの検査を受け、うち約80%がこの症候群の疑いがあると診断されています。

この症候群は単に呼吸が止まるだけの病気ではありません。心臓、脳、血管に負担をかけるのです。実は、睡眠時無呼吸症候群があるだけで高血圧症、脳卒中、狭心症、心筋梗塞など循環器病を合併する危険が高まることがわかっています。無呼吸回数が多くなるにつれて、つまり重症になればなるほど、そのリスクは高くなります。

しかし、一方で、この症候群の治療をきちんと受けると、長生きできる可能性があることもわかっています。

いびきは無呼吸の前兆です。そのため、いびきは睡眠時無呼吸症候群の患者さんの多くに認められます。しかしこの症候群はいびき以外には自覚症状が出にくい病気です。昼間の眠気を自覚される方もいますが、それは半数程度で、なかなか自分だけではわかりにくい病気なのです。

周りの人から寝ている時のいびきや無呼吸を指摘されている方は、ぜひ専門医療機関を受診してください。そして、周りでいびきがひどい方や寝ている間に呼吸がしばしば止まる方がいたら、ぜひ受診を勧めてあげてください。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

(1)「閉塞性」と「中枢性」の2タイプ

ここから睡眠時無呼吸症候群について詳しく説明します。

睡眠中10秒以上、呼吸が止まることを「無呼吸」と呼び、無呼吸にはなっていないけれども、もう少しで止まりそうな弱い呼吸を「低呼吸」といいます。

1時間あたりの平均の無呼吸と低呼吸の回数を「無呼吸・低呼吸指数」(AHI)(注1)といいますが、この指数が5以上(5未満は正常とされています)であれば異常と判定し、これを「睡眠呼吸障害」(SDB)(注2)といいます。

睡眠呼吸障害のなかで、日中の眠気や倦怠感などの症状を伴う場合、今回のテーマである「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)と診断します。最近は、症状がなくても無呼吸・低呼吸指数が15以上ならばこの症候群と診断してよいことになっています。

睡眠時無呼吸症候群というと、いびきがひどくて、肥満の人を想像する方が多いと思います。もちろんこの症候群の患者さんにはそういう方が多いのですが、必ずしもすべての人が肥満でいびきがひどいというわけではありません。

実は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)は大きく分けて2種類あるのです。一つは、呼吸という運動は保たれているが上気道のどこかの閉塞によって鼻・口の気流が停止する「閉塞性(obstructive)」の睡眠時無呼吸症候群(OSASといいます)です。もう一つは呼吸運動そのものが停止する「中枢性(central)」の睡眠時無呼吸症候群(CSASといいます)です〈表1〉。

(注1)無呼吸・低呼吸指数AHIは,無呼吸(apnea)、低呼吸(hypopnea)、指数(index)の略。

(注2)睡眠呼吸障害SDBは、sleep(睡眠)disordered breathing(呼吸障害)の略。

要するに、呼吸をしようとしているけれども上気道が何かの原因でふさがっていて息ができないのが「閉塞性」で、呼吸せよという脳からの信号自体が一時的になくなるのが「中枢性」ということになります。つまり、「閉塞性」ではいびきが生じますが、「中枢性」では基本的にいびきはかかないのです。

以下で、「閉塞性」は閉塞性睡眠時無呼吸症候群を、「中枢性」は中枢性睡眠時無呼吸症候群のことを 示します。

(2)睡眠時無呼吸症候群の頻度は

この症候群の患者さんは、どれくらいいるのでしょうか。「閉塞性」は世界的に有病率が高いことがわかっています。30~60歳を対象とした有名な米国の研究によると、無呼吸・低呼吸指数が5以上の睡眠呼吸障害の患者さんの割合は男性24%、女性9%で、うち症状がある睡眠時無呼症候群の割合は男性4%、女性2%であったと報告されています。

わが国では大規模な調査はなく、正確な「閉塞性」の有病率は明らかではありませんが、一般住民910人を対象とした調査では、無呼吸・低呼吸指数が10以上の「閉塞性」は男性3.3%、女性0.5%(全体で1.7%)という報告があります。

単純に計算すると、日本での患者数は約200万~300万人ということになりますが、実際はもっと多いのではないかと考えられています。正確に診断されている人が少ないことが問題視されており、治療の 対象となる睡眠時無呼吸症候群の80~90%がはっきり診断されていないと言われています〈図1〉。

(3)この症候群が起こるメカニズム

〈図2〉を見ていただきながら話を進めます。

「閉塞性」はどのようにして起こるのでしょうか。私たちはふつう寝る時は仰向けの時間が長いと思います。仰向けで寝ている時は重力の影響もあり、舌が下方(喉の奥の方向に)に少し落ち込みます(舌根沈下)。特に問題がなければその程度の舌の動きで気道が閉塞してしまうことはありません。

しかし、舌の周りに脂肪などの余分な組織が付着しているか、もしくはもともと気道自体が狭い人などでは、仰向けで寝た場合、そうした舌の下方への動きによって気道が狭くなり、極端な場合は気道を完全に塞いでしまうのです。これが「閉塞性」の正体です。ですから、肥満の方で頸部に脂肪が多く付着しているような場合は「閉塞性」を引き起こす可能性が高くなります。

しかし、リスクがあるのは肥満の方だけではありません。アジア、特に日本を含めた東アジアの人はあごが小さく、もともと気道が狭い人が多いとされており、肥満がなくても「閉塞性」が生じやすいと考えられているのです。

いびきは狭くなった気道を何とか空気が通過した時に発する音で、いわば気道が狭くなっていることを知らせる重要なサインです。肥満がなくても、いびきをよくかく方は「閉塞性」を疑ってみる必要があります。

一方、「中枢性」は脳の呼吸中枢から信号が送られないことによって生じる無呼吸です。「閉塞性」と違って上気道の状態に問題はありません。つまり、純粋な「中枢性」の患者さんはいびきをかきません。

「中枢性」がどのような仕組みで起こるのか、まだ十分に解明されていない部分が多いのですが、脳にある呼吸の司令塔の機能異常などが原因として考えられています。

予防はできるの?

生活習慣を改善することによって、「閉塞性」の方は予防することが可能です。肥満が原因の場合、予防は肥満にならないことに尽きます。過度の飲酒も避けてください。泥酔することで気道周囲の筋肉の緊張状態が過度に失われてしまい、睡眠時無呼吸症候群の原因になります。

喫煙も気道に炎症を起こし、結果的に気道がむくんでしまう(浮腫)ので、この症候群の原因にもなります。ですから、禁煙は予防を考えるうえで大切です。まとめていえば、循環器病の予防自体が、睡眠時無呼吸症候群の予防にもなるのです。

おわりに

ちょっと前までは、睡眠時無呼吸は病気だとは考えられていませんでした。いびきをかいていたと思ったら急に呼吸が止まって、しばらくしたらまた大きないびきをかき始める、何とも騒々しくて迷惑な人ぐらいにしか思われていませんでした。ところが、現在は医学的にはっきりした病気、しかも循環器病と深く関わる病気と捉えられています。

考えてみれば、長い人生のうち、約3分の1の時間は寝ているのです。最近ようやく睡眠の重要性が指摘されてきましたが、私たちはこれまで以上に、この人生の3分の1の送り方に注意を払うべきなのです。

睡眠時無呼吸症候群は、私たちが眠っている間に着々と循環器病の下地をつくっているのです。繰り返します。周りの人から寝ている時のいびきや無呼吸を指摘されている方は、専門医療機関を受診してください。周りでいびきがひどい方や寝ている間に呼吸が止まっている方がいたら、ぜひ受診を勧めてあげてください。それが循環器病予防のための重要なステップになるのです。